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「この光景を未来に残したい」ナマハゲ文化担う男鹿の稲作農家・武田さんが、稲作をする理由

男鹿の農村風景を子ども達へ

ナマハゲ文化のある地、秋田県男鹿市。大晦日になると市内ではそれぞれの地区ごとにナマハゲ行事が行われ、ナマハゲに扮した人々が家々を訪れます。その際、家の人々からナマハゲに振る舞われるのはお酒や御膳。武田さんのつくられるお米も、そんな男鹿地域の恵みの一つです。

武田さんが稲作農家となったのは7年ほど前のこと。当時の心境を武田さんはこう話してくれました。

「この地で生まれ育って、小学生の頃から田んぼのある男鹿の風景を見て育ってきました。けれど今は時代が進み、稲作をやる人たちが少なくなってきています。農家がいなくなればその土地は荒れ果て、子どもの頃から親しんでいる男鹿の風景はなくなってしまう。

そうなってしまっては子どもたちが男鹿の風景を懐かしく思うことも、お米を育てたいと思う機会も無くなってしまいます。

あるとき男鹿の風景を見て、それは嫌だなと思ったんです。未来を担う子どもたちに、農業という選択肢を残してあげたい。そうして稲作農家になる決心をしました。」

 

背中で学んだ修行期間

そうして武田さんは、男鹿市の男鹿中地区で活動されている農家さんの下へ弟子入り。地区全体で後継者が不足していることもあって、武田さんは稲作農家をされている親族とは別の農家さんのもとで修行に励まれました。 師匠の背中を見ながら操作や考え方を学んできたといいます。

その後一年ほどの研修を経て、独立。

師匠との日々を武田さんは次のように振り返ってくれました。

「とにかくお米を作るのが上手い方でした。植え方、肥料の配合、水の管理……その方から教わったことをいまでも大切にし、師匠の姿を目標にして頑張っています。」

武田さんの田んぼ

「けれど雑草を生やさないようにするのは、なかなかその方のようにいかず……。毎年雑草を抜くんですけど、必ず生やしてしまうんですよね。なので私の田んぼは、他の方と比べてわかりやすいんです(笑)」と、照れ笑いを浮かべながら教えてくれました。

 

数字には表せない不思議な「おいしさ」

米作りは天候と水、そして日当たりといった、その土地ならではの環境に左右されます。

武田さんの活動する男鹿中地区は中山間地。そのため、田んぼによっては日当たりが良くない場所もあり、同じ地区でも収穫量が変化します。

「水の確保や地形の関係もあり、一日に最低一回、多い日には二回、足を運び、田んぼの様子をチェックしています。
くわえて男鹿は地形の関係で広い田んぼを確保できず、数カ所に点在してしまうため管理に手間がかかります。私の管理している田んぼは比較的まとまって位置しているんですけどね。」

ナマハゲの地で育ったあきたこまち

今年は毎年悩まされる水不足の経験を踏まえ、早めに田植えをおこなった武田さんの田んぼ。その後は例年より水が不足しましたが、結果的に被害は少なく済んだといいます。

お米のおいしさについて伺うと「正直、数字には現れないんですよ。」と不思議そうな表情を浮かべながら話してくれました。

「自分ではいつも食べているので気がつかないのですが、たまに遠くへ出かけて白米を食べると『うちのお米っておいしいんだなぁ』としみじみします。

不思議なんですけど、お米の成分をデータ化しても、必ずしもそのおいしさが数字に表れるわけではないみたいなんです。実はお米農家でこの件について同意する人が結構いるんですよ。お客様も『おいしい』と言ってくださっていますし、実際私自身もおいしいと感じるのですが、数字には現れない。不思議なおいしさなんです。

私の腕というよりも、きっとこの土地ならではの恵みがお米に詰まっているんだろうと。そう考えています。」

ご飯イメージ

なまはげ文化の担い手として

稲作農家として活動する一方、武田さんはナマハゲ文化の担い手としても活動しています。
大晦日、ナマハゲに扮し家々を回り、厄災を払い、五穀豊穣などを願っています。

例えば子どものいる家では、子どもが親の元へ逃げ込めるよう追い込む方向を考えるなど、家族の絆を感じられるよう意識しているという武田さん。

『祭り留学』バナー

(過去にはオマツリジャパンの主催する『祭り留学』にもゲストとして出演いただきました。)

「まさか自分がナマハゲになるなんて思ってもみませんでした。帰省する方や地域の方が楽しみにしてくださっている姿をみて、ナマハゲはこの地域になくてはならないものだと感じるようになりましたね。
神様の遣い、地域を見守っていく存在という意味でも、続けていきたいと思っています。」

なまはげ太鼓

ナマハゲの恵みを受けた地でお米を育て、ナマハゲに扮して家々を回り、穢れを祓って幸せを招く。
そんな文化を担う、武田さんが作った、数値にはないおいしさを持つお米。

ナマハゲの地・男鹿そして、武田さんはじめ男鹿の人々に想いを馳せながら召し上がってみてください。

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