微笑みを欠かさず、厄を払うヒーロー “帖佐人形”【商品紹介】

いつだって笑顔を絶やさず、圧倒的な強さで悪いものから私たちを守ってくれるヒーロー。
そして、その笑顔と強さの裏に隠された過去の歴史は誰に教えるでもなく、ただ忘れ去られるもの。でもだからこそ、ヒーローはいつの時代も心強く、誰かの憧れなんでしょうね。

今回はそんな優しくも強さを持ったヒーロー土人形・帖佐人形をご紹介します。

ほんわかとした表情が魅力“帖佐人形”

のほほんという言葉がぴったりな表情をした犬の土人形。見ていると思わずこちらの表情まで緩んでしまいます。人懐っこそうなわんちゃんです。

この土人形は鹿児島県姶良市の帖佐でつくられているもので、名前を帖佐人形と言います。

赤や緑、黄色といった原色が多く用いられており、表情とのメリハリが効いていますね。

製法は伝統的なものを踏襲しており、土に関しては古くから姶良市の田んぼの土を用いており、職人である折田さん自らが掘りにいかれるほど。

採取した土は、折田さんの自宅の庭で保存され、少しずつ制作に用いられていきます。 土をこね、粘土を型にはめ、乾燥させたり、素焼きをしたり……。また本焼きをおこなう際は、幾つもの人形を一気に焼き上げるため、焼き上げる期間だけで三、四ヶ月の時間が必要だといいます。
すべての制作工程を合計すると、一個の帖佐人形をつくるのには約半年ほどかかるというのですから驚きです。

例えば新年に向けたモチーフを製作する際には夏頃から準備が始まるわけですね。

帖佐人形の始まり 朝鮮出兵

帖佐人形の歴史は古く、始まりは西暦1500年頃にまで遡ります。
当時、全国統一を成した豊富秀吉は、隣国朝鮮の奥に存在する明へ勢力を伸ばすべく、朝鮮出兵と呼ばれる戦争を仕掛けました。

この戦争は双方痛み分けで終焉を迎えますが、戦争に参加した大名の中には朝鮮の人々を連れ帰ったものもいたとされています。当時薩摩国の大名だった島津 義弘もそんな大名の一人でした。
遠く離れた地から連れてこられた朝鮮の人々は、薩摩にて献上用の茶碗を作っていたそうです。
それらはのちに帖佐焼と言われる焼き物となっていきますが、そんな日々の中で、朝鮮の人々は故郷に想いを馳せ、犬の置物を制作しました。

その置物や製法は地域で内職を営んでいた40件ほどの下級武家へと広がり、やがて帖佐人形の文化となっていったのです。

しかし長い歴史のなかでは、あまりに素朴な絵付けによって見向きされなくなったり、畑のカカシに使われたりといった扱いを受けることもあったといいます。
さらには太平洋戦争という大きな出来事によって、昭和の頃にその伝統は途絶えてしまっていました。

そんな帖佐人形の歴史を復活させたのは、かつて人形を製造されていた武家の末裔であった折田さんのお祖父様とそのご友人だったといいます。

戦後、姶良市では帖佐人形に関する資料や窯が見つかり復興の機運が高まりました。そうして折田さんのお祖父様とご友人は“帖佐人形保存会”を立ち上げ、調査を開始したのです。


途中、ご友人が離脱しつつも、作り方を記した資料や、子どもたちの遊び道具になり割れてしまった帖佐人形を入手し、復元するなどの活動を行なっていったといいます。
そうして、折田さんの家に保存されていた型が発見され、窯の整備がなされたことで、帖佐人形の文化が復興したのです。

姶良市にある、歴史の見届け木・蒲生の大クス

姶良市は県庁所在地である鹿児島市の北隣りに位置し、鉄道や道路も通っている暮らしのいい街です。また日本有数の温泉どころ霧島市とも隣り合っており、活火山である桜島を眺めることもできます。

帖佐市には様々な見どころがありますが、特に注目したいのは“蒲生の大クス”です。蒲生の大クスとは、1123年に創建された蒲生八幡神社の境内に佇む大きな楠のこと。
保安4年(1123年)、蒲生に移ってきた初代領主・蒲生舜清が八幡神社を建立したときには、すでに神木となっていたと伝えられ、その樹齢の長さが伺えます。

一説には樹齢1600年ともいわれ、しっかりと張った根や壮大に広がる枝ぶりが木である以上の何か大きな雰囲気を感じさせることからパワースポットとして親しまれています。

日本一の巨樹として登録されており、目通り幹囲み(地上1.3mの幹の外周)24.22m、そして根まわり33.57mととにかく巨大。中に入ることはできませんが、幹には空洞が存在しているというのも特徴的です。
毎年11月第3日曜日には秋まつりが開催されます。

推定樹齢1600年、記録に残っているだけでも900年以上。500年ほど前からはじまった帖佐人形の歴史も、この楠は木届けてきたのかもしれません。
悠久の時を過ごす楠から、故郷を想い焼き物を焼く朝鮮の人々の姿はどのように見えたのでしょうか。

まとめ

長い時を経て受け継がれ、途絶えつつも復活した帖佐人形。それでもなお崩さない穏やかな表情には、優しさだけではない、たしかな強さが宿っているように思えます。

優しく強い帖佐人形、そういうとなんだかまるでヒーローのよう。
「家を災いから退け、護って欲しい」、そんな願いは帖佐人形というヒーローに頼むのが一番なのかもしれません。

帖佐人形狛犬

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