宇都宮の伝統“黄ぶな”に、ふたたび願いを込めて【商品紹介】

みなさんこんにちは、宇都宮在住の小泉です。宇都宮といえば「餃子」を求めて観光にいらっしゃる方で賑わいます。でも、餃子だけ食べて帰るなんて、もったいない。街を歩けばきっと、この独特な配色の“黄色い魚”にも一度は出会えるはずです。

街で飾られていたり、オリジナル商品がお土産屋さんに並んでいたり。一体この魚はなんなのか…?知る人ぞ知る宇都宮の見どころとして、今日は伝説の「黄ぶな」をご紹介しましょう。

食べたら病が完治した!伝説の“黄色いフナ”

こちらが、宇都宮名物の「黄ぶな」。かつて無病息災を願うお守りとして作られ、現在に至るまで伝承されてきた張り子の郷土玩具です。

黄色の体に、赤色の顔。絵付けされる中で、厄除けの色として赤色が施されたのだとか。日本伝統のダルマや大分県の「福獅子」、福島県会津若松市の「赤べこ」などの赤色にも同じ意味合いがあります。

…と言っても、なぜ“黄色いフナ”がモチーフなのか。なぜ、張り子で作られているのか。その由来は、宇都宮で天然痘が流行した時代にさかのぼります。

当時は治療法も薬もなく、多くの方が病に耐え苦しんでいました。そんなある日、宇都宮の中心を流れる田川で珍しい“黄色いフナ”が釣れたのだとか。栄養をつけてもらうために病人に食べさせたところ、なんと、天然痘がすっかり治ったんだそうです。

(上の写真が黄ぶなが釣れたという「田川」。今も宇都宮駅近くを流れています。)

噂はたちまち広まるも、黄色のフナはとても珍しく、簡単に釣れるものではありませんでした。そこで人々は、張り子で黄ぶなを作って軒下に吊るし、無病息災を祈願するようになったといいます。

この習慣は100年以上伝承されており、今でも、お正月になると宇都宮二荒山神社の境内で黄ぶなの張り子玩具が売られていますよ。

宇都宮の大切な黄ぶな文化を継承していく

黄ぶなが作られ始めた当時は、農家さんが副業として生産していたんだそうです。しかし、時代と共に黄ぶな工芸が徐々に衰退。伝統文化をなんとか受け継いでいこうと、工芸店の「ふくべ洞」の小川さんが主体となって制作を続けています。

後継者不在の中、小学校を巡回し、子どもたちへの継承活動も行なっているそうです。また宇都宮の「宮まつり」では、黄ぶなの絵付け体験コーナーも設けられていました。

職人が丁寧に手作りしている張り子細工は、描彩や大きさ、形状が一つひとつ異なります。特筆すべきは、なんともいえぬこの表情。思わず、肩の力がすっとほぐれませんか? 実物を目にした際にはきっと、手作りの温もりや、味わい深さをたっぷりと感じていただけるはずです。

ふたたび「黄ぶな」に願いを込めて

天然痘の大流行から時を経て、21世紀。2020年のコロナ禍をきっかけに、黄ぶながふたたび注目を浴びることとなりました。

当初「アマビエ」という疫病退散の妖怪が、全国的に話題になったのを覚えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。アマビエをモチーフとしたイラストや食品、アイテムを至るところで目にしましたよね。 その頃、宇都宮では「黄ぶな」が無病息災を願うお守りとして再熱していたわけです。

当時SNS上から、コロナ禍の早期収束を願う「#黄ぶな運動」が展開。自宅にいながら楽しめる関連グッズや食品が販売され、さらに健康で過ごすための「黄ぶな体操」も考案されました。

2021年からは、927(きぶな)にかけて9月27日を「黄ぶなの日」と制定(2023年には一般社団法人・日本記念日協会に認定)。毎年9月になると約1ヶ月を通して、医療従事者の方への感謝を届けたり、伝統を継承したりする目的で、イベントが開催されています。

時代を超えて、宇都宮の人々は「黄ぶな」と共に惨禍を乗り越えてきたのですね。 張り子の郷土玩具は、健康でいてほしい大切な人へのお土産や、病気・ケガの療養中の方へのお見舞いにおすすめです。温かみを感じられる張り子細工や、愛らしい表情に、きっと心がほっと安らぐのではないでしょうか。

まとめ

餃子だけではない、宇都宮の伝統文化である「黄ぶな」。初めて知ったという方も多いかと思います。遠方に訪れる際には、名物だけでなくその土地に根付く文化に目を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。

お伝えしたい宇都宮の魅力はまだまだありますが、まずはひとつ、無病息災を願う黄ぶな文化を心に留めてくださると幸いです。 いつか宇都宮にお越しになった際には、ぜひ街中で愛くるしい黄ぶなちゃんを探してみてくださいね。

黄ぶな

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