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埼玉の魅力を伝えていきたい 川越の人気雑貨店“深公”の始まりにある店主・小谷野さんの想い

雑貨メーカーで芽生えた想い 深公の始まり

「もともと僕は、都内の大手雑貨メーカーに入社し働いていました。 学生の頃から、何か生活を彩るモノづくりをしたいと考えており、様々な商品やバリエーションを作ることのできる雑貨メーカーに就職したんです。」

深公 店主・小谷野さん

海外で製作されたものを輸入し、全国の店舗へ輸送する毎日。そうした日々の中で小谷野さんはある想いを抱くようになったといいます。

「大量生産でたくさんの商品をみていくうちに、『目の前のこの商品は、いったい誰に必要とされているのだろう?』と考えるようになったんです。もちろん大量生産は、その分価格を抑えられるため必要な存在だと思っています。トレンドのデザインを楽しむため、製品寿命が短くなってしまうのも納得できます。

ですがモノづくりに関わる一人の人間として、私はお客様へ、長く使っていただける商品を提供していきたい。そう考え、独立へ至ったんです。」

独立する際に屋号の参考としたのは、川越地域で代々商売をしていた小谷野さんの一族の慣習でした。

「なぜかはわからないんですけど、代々商売をおこなっている私たちの一族では『深』をお店の名前の先頭に、そして二文字目には人の名前の最初の文字をつける風習があったんです。例えば、善○○さんというご先祖様がやられていたお店は『深善』という名前が付けられていました。私の場合も例に倣って、『深』を先頭に。そして二文字目には父の名前をいただいて『深公』という屋号ができたんです。」

川越の街並み

埼玉の魅力を伝えていきたい

独立には自身のルーツである埼玉への想いもあったと、小谷野さんは話します。

「スマートフォンなどでネット記事などを呼んでいると『魅力度最下位の埼玉県』といった見出しが目に付くことがあり……。ある一面だけが大きく取り上げられているのに、なんというかモヤモヤとした気持ちを抱いたんです。」

そうした想いから、独立を果たした小谷野さんがまず企画したのが、川越の織物・川越唐桟を使ったストールの生産でした。

川越の街並み

川越唐桟(とうざん)とは、名前が示すとおり大陸から伝来してきた織物。そのルーツはインドにあるといわれています。縞模様が特徴の織物で、かつては川越のほか舘林などの地域で生産されていました。しかし、高価であることや、トレンドの商品と比較すると目立たないことから、現在はどの地域も衰退してしまっているといいます。

小谷野さんはこの川越唐桟を観光客や若い方でも楽しめるように髪留めやストールに加工。川越唐桟という織物の入り口となるような製品を目指したのです。その想いは見事に実を結び「『カワイイ』といって買っていただけることが多かった」と小谷野さんは振り返ります。

 

“売る”の難しさを痛感 それでも伝えていきたい想い

深公として活動していく中で、あらためて大手メーカーへリスペクトの念も生まれてきた、と話す小谷野さん。

「現在、取り扱っている商品は約20商品です。気持ちの面ではもっと増やしたいと思っています。
ですが、実際のところ増やしても売ることが難しいのが現実で……。伝統工芸品や郷土玩具といっても、商品である以上、売れてなんぼですからね。」

鴻巣の赤物 獅子

職人さんの元へ足を運んだり、会話を交わしたりしながらコミュニケーションを重ね、想いのある製品を売っていきたい、と話します。

「職人さんたちは、出自や承継の経緯など本当にバラバラです。中には、その品を『特別好きではない』とおっしゃる方々もいます。ですがそれは『嫌いではない』ということでもあると思うんです。
彼らの積み重ねてきた技術や考えを色々な方に伝えていきたい。
今、伝統工芸品や郷土玩具は、もともと地域で親しまれてきた使われ方のほかに、雑貨インテリアやおまじないの品として、など様々な価値が見いだされ、多くの人に親しまれています。
ここ埼玉の伝統工芸品や郷土玩具も、そういった様々な楽しみ方をしていただけるように、これからも発信を続けていきたいと思っていますね。」

江戸小物玩具 ざるかぶり犬張子

雰囲気あるお店の中から、忙しい合間を縫ってご対応いただいた小谷野さん。お話しからは、埼玉や伝統工芸、そして何よりモノづくりへの熱い想いが伝わってきました。

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