犬が顔を覆い隠すほど大きな笊(ざる)をかぶっている、ざるかぶり犬。江戸時代から親しまれている、江戸の有名な郷土玩具です。
まだ医療が十分に発達していなかった江戸時代。病気や怪我で亡くなる子どもが多くいたとされています。そのため親は子どもに、願いをこめたおもちゃを与えるようになったのです。
ざるかぶり犬に込められている願いは成長祈願。犬は安産であり、また多産であったため、子孫繁栄の縁起物として人気があったのです。
また出産見舞いやお宮参りの品としても贈られていました。
ざるかぶり犬が被っている笊は竹で編まれたもの。赤ちゃんの夜泣きなどは昔、体内で虫が悪さをしているのが原因だと考えられていたため、その虫を笊で掬い取る「虫封じ」のまじないが込められています。また、笊は編み目から水を通すため「鼻詰まりが治るように」との願いも込められているのです。
さらに「犬」の頭に「竹」の笊が被さっていることから「笑」という漢字を表しているとされ、笑いで福を呼び込む笑門来福の縁起物としても親しまれています。
ゆるッとした表情が魅力的な“川越だるま抱き猫”や、昔ながらの縁起物である“鴻巣の赤物“、そしてなんといっても伝統の“川越だるま”……。 そういった埼玉に伝わる様々な伝統工芸品や郷土玩具を取り扱っているのが、埼玉県川越市で活動する問屋・深公(ふかこう)。
店主を務める小谷野さんはかつて雑貨メーカーに勤め、ある想いがキッカケで深公を始めたのだといいます。 小谷野さんが感じた想いとは?深公で成し遂げたいこととは?小谷野さんの活動について迫っていきます。
「もともと僕は、都内の大手雑貨メーカーに入社し働いていました。 学生の頃から、何か生活を彩るモノづくりをしたいと考えており、様々な商品やバリエーションを作ることのできる雑貨メーカーに就職したんです。」
海外で製作されたものを輸入し、全国の店舗へ輸送する毎日。そうした日々の中で小谷野さんはある想いを抱くようになったといいます。
「大量生産でたくさんの商品をみていくうちに、『目の前のこの商品は、いったい誰に必要とされているのだろう?』と考えるようになったんです。もちろん大量生産は、その分価格を抑えられるため必要な存在だと思っています。トレンドのデザインを楽しむため、製品寿命が短くなってしまうのも納得できます。
ですがモノづくりに関わる一人の人間として、私はお客様へ、長く使っていただける商品を提供していきたい。そう考え、独立へ至ったんです。」
独立する際に屋号の参考としたのは、川越地域で代々商売をしていた小谷野さんの一族の慣習でした。
「なぜかはわからないんですけど、代々商売をおこなっている私たちの一族では『深』をお店の名前の先頭に、そして二文字目には人の名前の最初の文字をつける風習があったんです。例えば、善○○さんというご先祖様がやられていたお店は『深善』という名前が付けられていました。私の場合も例に倣って、『深』を先頭に。そして二文字目には父の名前をいただいて『深公』という屋号ができたんです。」
独立には自身のルーツである埼玉への想いもあったと、小谷野さんは話します。
「スマートフォンなどでネット記事などを読んでいると『魅力度最下位の埼玉県』といった見出しが目に付くことがあり……。ある一面だけが大きく取り上げられているのに、なんというかモヤモヤとした気持ちを抱いたんです。」
そうした想いから、独立を果たした小谷野さんがまず企画したのが、川越の織物・川越唐桟を使ったストールの生産でした。
川越唐桟(とうざん)とは、名前が示すとおり大陸から伝来してきた織物。そのルーツはインドにあるといわれています。縞模様が特徴の織物で、かつては川越のほか舘林などの地域で生産されていました。しかし、高価であることや、トレンドの商品と比較すると目立たないことから、現在はどの地域も衰退してしまっているといいます。
小谷野さんはこの川越唐桟を観光客や若い方でも楽しめるように髪留めやストールに加工。川越唐桟という織物の入り口となるような製品を目指したのです。その想いは見事に実を結び「『カワイイ』といって買っていただけることが多かった」と小谷野さんは振り返ります。
深公として活動していく中で、あらためて大手メーカーへリスペクトの念も生まれてきた、と話す小谷野さん。
「現在、取り扱っている商品は約20商品です。気持ちの面ではもっと増やしたいと思っています。
ですが、実際のところ増やしても売ることが難しいのが現実で……。伝統工芸品や郷土玩具といっても、商品である以上、売れてなんぼですからね。」
職人さんの元へ足を運んだり、会話を交わしたりしながらコミュニケーションを重ね、想いのある製品を売っていきたい、と話します。
「職人さんたちは、出自や承継の経緯など本当にバラバラです。中には、その品を『特別好きではない』とおっしゃる方々もいます。ですがそれは『嫌いではない』ということでもあると思うんです。彼らの積み重ねてきた技術や考えを色々な方に伝えていきたい。
今、伝統工芸品や郷土玩具は、もともと地域で親しまれてきた使われ方のほかに、雑貨インテリアやおまじないの品として、など様々な価値が見いだされ、多くの人に親しまれています。
ここ埼玉の伝統工芸品や郷土玩具も、そういった様々な楽しみ方をしていただけるように、これからも発信を続けていきたいと思っていますね。」
雰囲気あるお店の中から、忙しい合間を縫ってご対応いただいた小谷野さん。お話しからは、埼玉や伝統工芸、そして何よりモノづくりへの熱い想いが伝わってきました。
商品名 | 江戸小物玩具 ざるかぶり犬張子 |
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大きさ | ・商品はすべて職人の手作りのため、描彩や大きさ、形状が写真と若干異なる場合がございます。 ・在庫状況により紐の色が違う色の場合もあります。 |
形状 | 幅 9cm/高さ 9cm/奥行 10.5cm (ザルを含む) |
商品仕様について | 素材:張子 |
おすすめ | ・将来の成功を祈念した贈り物を検討している方 ・健康や出産・安産を祈願したい方 ・日常をちょっとした癒しで彩りたい方 |
配送スケジュール | 到着まで7〜10日かかる商品です |
配送について | 「深公」からの発送商品です。 |
送料について | 表示価格は送料込み価格です。 |