【青森の夏をお家で楽しむ】本格ねぷた灯篭を手軽に組める、クラフトキット
青森県で毎年夏に行われている、「ねぷた」や「ねぶた」の祭り。青森ねぶた、弘前ねぷた、五所川原立佞武多(たちねぷた)、の三大ねぶた祭りには、毎年、約200万人近くの観光客が訪れるといわれています。
青森ねぶた祭は、奈良時代に中国から伝わった「七夕」祭りと、もともと津軽などにあった「精霊送り」などの行事が融合・変形したものだという説が有力。夏の農業の妨げとなる眠気(ねむけ)を追い払うため、灯篭を川に流す、「眠り流し」という精霊送りに似た行事が語源といわれ、「ねぷた」「ねぶた」の違いはそれぞれ、地方の訛りからきたものとされています。
この【ねぷた灯篭クラフトキット】は、青森県青森市浪岡でスクリーン印刷業を営む、サトウ孔芸が販売しているもの。夏のねぷたからは想像もつかない卓上サイズで、そのうえで手軽に楽しめる、ねぷた灯篭クラフトキットを作り上げたのです。
【絵師紹介】 ねぷた絵師 山谷寿華(じゅか)氏
青森市在住の新進気鋭のねぷた絵師。幼いころからねぷたを愛し、独学でねぷた絵を学んだ。荒々しく、生き生きとした絵を描く。また、ねぷたにステンドグラスのような表現や、碑文のようなレイアウトを用いるなど、伝統を守りつつ新しい手法を柔軟に取り入れ、自由自在な創作活動をしている。
“楽しい”を突き詰めて サトウ孔芸・佐藤さんが話す、パッチンクラフト・ねぷたクラフトキット開発の背景
ミニチュアサイズの弘前ねぷたを組み上げられる、パッチンクラフト・ねぷたクラフトキット。細かいディティールや、ねぷた絵師が監修したねぷた絵は壮観の一言です。 パッチンクラフトを手がけるのは、青森県青森市浪岡でスクリーン印刷を生業とする、サトウ孔芸株式会社です。
開発者である佐藤さんは「“楽しい”を突き詰めているうちにできちゃったんですよね」と言います。 パッチンクラフト開発の背景とは?佐藤さんの語る“楽しい”とは?お話を伺いました。
シルクスクリーン印刷に魅せられて サトウ孔芸のはじまり
「会社設立は35年前、現社長である父が起業しました。18歳で青森から東京へ、最初はパッケージデザインの仕事をしていましたが、会社とそりが合わず退社、青森に帰って印刷会社に勤めはじめた折り、社員にたまたまシルクスクリーン印刷の技術を東京で学んだ人が居り、そこでシルク印刷の作品を見て「こんなすごい印刷があるのか!」と感動し、のめりこんでしまったそうです。」
そう話すのはサトウ孔芸株式会社・つくってあそぼう課の佐藤さん。
活動のなかで大切にしているのは「楽しいかどうか」だとといいます。
「父はさきほど伝えた通りですが、母も服飾の仕事をしていたので、DNAなのかもしれないですね(笑)牛乳パックを切って何かを作ったり、工作番組で紹介されたものを作ったりするのが大好きでした。
何かが出来上がる過程というか、変化が好きなんです。頭の中にあるイメージが現実の世界に現れるのがとても楽しく感じられました。
うまく言葉にできないですが……。人間って、大昔から生きるために道具を作ってきたと思うんです。マンモスを狩るための石斧だったり、早く移動するための乗り物だったり。“作る”ことは何と言うか、生きる事につながるんだと思います。農業はその最たるものだと思ってるんです。そういう「作り出す立場」に居れることが楽しいと思いますし、やりがいも感じますし、やっぱり「本能的に好き」なんだと思います。」
「レーザーカッターを楽しく使いたかった」 パッチンクラフト開発秘話
弘前ねぷたを手軽に楽しめる、パッチンクラフト・ねぷたクラフトキットも“楽しむ”を軸に活動した結果、生まれたものだったと言います。
「黒石のある会社の方からお話をいただいたのがきっかけでした。その方は地元への愛がとても強い方で『ねぷたのペーパークラフトを作りたい』というご相談をいただいたんです。
ですがお話を重ねていく中で『もっと、しっかりしたものを作りたい』というお話になり……。
そのとき、導入したものの、しっくりくる使い方のできていなかったレーザーカッターが頭をよぎったんです。」
もともとは他の事業での使用のために導入したというレーザーカッター。レーザー加工機とも呼ばれ、対象となる物体へレーザーを照射することで、切断やマーキング、彫刻ができる機械のことです。
「レーザーカッターを用いて、木板にレーザーを照射。パーツに加工すれば『プラモデルみたいにねぷたを組み上げられ、楽しいことになるのでは?』と考えたんです。
その後、黒石の会社の方にその案をご提案しました。そうして受け入れていただいたことで、制作へと移り、ねぷたクラフトキットの原点、アーキタイプが誕生しました。」
ねぷたの設計図から読み取る息遣い 商品化への工夫
製品化へ向かってこだわったのは「組みやすい製品にすること」だった、と佐藤さんは話してくれました。
「説明書や盤面を組みやすいものにしなければと、試行錯誤を繰り返しました。価格を安くという点にもかなりこだわりましたね。 やっぱり、たくさんの方に作ってもらいたいので、手に触れてもらいやすいものに仕上げたかったんです。」
製品化にあたって、同郷に済むねぶた絵師の山谷寿華先生に監修に入ってもらったり、本物のねぷたの設計図面を見たりしてブラッシュアップを重ねていったそう。
「ネプタに限らず、構造物や、その設計図を見ると『このギミックすごい!!』とか『よくこんな作り方を思いついたなぁ』と常に発見がありましたね。そうやって理解したことを元に、新しい試作品を作るのが楽しくて……。
もともと、見物人としてお祭りが好きでしたが、だんだんと祭りへの想いが深まっていきました。」
そうして完成したのが、パッチンクラフト・ねぷたクラフトキットなのです。
パッチンクラフト、そしてサトウ孔芸のこれから
その後は、パッチンクラフトを一つのブランドとし、ねぷた灯籠クラフトキットや金魚ねぷたクラフトキットなどをリリースしているサトウ孔芸。
これからについて「日本各地のお祭りをパッチンクラフトで再現していきたいと思っていますね。八戸の八幡馬はイメージが浮かんでいるところです。」と話してくれました。 「なかなか時間がなくてすぐにはできないんですけど……(笑)」という佐藤さん
「みんなが触れてもらいやすいパッチンクラフトを作って、多くの人に“作る”楽しみを伝えられたらと思っています。 その過程が、私にとっても“楽しい”時間になりますからね。」
「やっぱり自分が楽しいことでないと!」と話す佐藤さん。パッチンクラフトを活用したアイデアは色々とある様子。サトウ孔芸、そしてパッチンクラフトのこれからが楽しみですね!